2007年8月16日〜8月22日
淡青丸 航海日誌


編者:東京大学工学部4年

        藤井 翔


8月15日


本日の天候

おおむね晴れ。鹿児島市内は夕暮れ頃に一時通り雨が降り出す。
気温は31度前後と東京より穏やかな気温である。

本日のTri-Dog

本日鹿児島入りしたため実験は明日から。

本日の食事

船上生活は明日から。 正直期待より不安の方が多いです。

8月16日


本日の天候

快晴。たぎりの泡が海面で見えるほど穏やかである。

本日のTri-Dog

Tri-Dogの説明はホームページに記載されているので詳しくはそれを参考してもらいたい。
簡単に説明すると、ロボット自体が頭脳を持っており、ソナーで海中の地形を認識しそれに応じて
深度の上昇下降を行う。
危険物を自動回避しながら、海底から一定高度における写真を撮ってくる自律型の海中ロボット(AUV)である。
そして今回の実験の研究テーマは、撮られてきた写真を一枚のモザイク写真にすることであり、
いわば海底版Google Earthを作ることである。
そのモザイク写真を作る際に重要なのは、その写真がどこで取られたかという位置情報であり、
その精度を上げるためにTri-Dogはランドマークという海中にある目標物を設定する。
今回の実験では、2つの人工の反射板を海中に沈めてそれをランドマークに設定することにした。
以上が、Tri-Dogの概要と今回の実験の目的である。

午後に第1回目の実験をすることに。
投入の際に、Tri-Dog(以下TD)のメインPCとコントローラの無線LANが切れて一瞬ひやっとすることに。
ランドマークは一つしか見つけられなかったものの、緊急浮上することなく、無事ミッションを完了する。
しかし、撮影されていた画像はフラッシュが適切に機能していなかったため明らかに暗い。
夜にフラッシュの調整をして、明日の実験での成果を期待する。

桜島を背景にしたTri−Dog

ランドマークを落とすときの様子

本日の食事

淡青丸はチャイムで食事の準備の完了を知らせるようである。
席は全員が同時に座れるほどの場所はないので、手の空いた人から順繰り食べていく。
夕食は鮭をメインのしたかなりボリュームがあり、自分は食べきれず・・・
しかしながら、期待以上の味でびっくり、そして幸せになれた。

ボリュームがある夕食

本日のイベント

救命操練
乗船したら必ず行なわなければならないものであるそうだ。救命操練とは、緊急時の対応をおそわることであり、
救命着のつけ方などを教わった。
救命着には点灯ライト、笛が装着されている。水の中に入るとガスボンベを通して、自動的に膨張するよう設計
されている。
その安全確認は年に一回行われているとのこと。服装の注意点としては、漂流したときの体温維持の為に長袖、
長ズボンの着用が義務であるとのこと。
研究者の数人が自分含めて短パン、半袖を着用していたので注意を受ける。
皆さん覚えていてください。

打ち合わせ
今回の淡青丸における実験の目的および注意事項の確認を乗船員と研究者間で交わす。
今回のグループを、大まかに3つの班に分かれているので、その大まかな概要を紹介する。

班名 班員-所属 目的
Tri-Dog班 浦教授、近藤准教授、坂巻技術専門職員、
巻(D3)、藤井(B4):
 東京大学・生産技術研究所
AUV「Tri-Dog1」によるサツマハオリムシ群集の
自動観測
水中成分分析班 山中准教授:
 岡山大学・自然科学研究科
岡村準教授:
 高知大学・海洋コア総合研究センター
タギリ海域、若尊カルデラ周辺のCTD観測と
マルチプルコアラー観測
プランクトン班 浦川准教授、伊地知(D1):
 東京大学・海洋研究所

鹿児島湾奥から湾口にいたるADCP観測と
プランクトン調査


船上からの花火大会観賞Part 1
ものすごく綺麗で、今日一日がんばったご褒美だったと思った。
隣に綺麗な女の子がいれば100倍感傷的になれたはずなのに・・・船内男だけ。

                                夕暮れの桜島

本日の編者の行動・感想

桜島を左手に出港する、桜島の火口からは少しばかり噴煙が噴いておりかなり壮観だった。
お風呂に入れるのが2日に1回とか、あのボリュームの食事をペロッと平らげる海の男達に驚かされる出来事が多かった。
作業が終了した12時ごろに晩酌をして寝床につく。残り5泊・・・

8月17日


本日の天候

いつまでこんな天気がいいんやら・・・気温33度、無風で海面は穏やか。

本日のTri-Dog

午前の第2回ミッションの今回もランドマークを1つしか見つけられずにTri-Dogはミッションを開始していた。
撮影された映像には大きなサツマハオリムシの群生が写っていた。
午後の第3回ミッションの潜水で初めてランドマークを2つとも見つけてミッションとなる。
ランドマークを2つ見つけられることで位置情報の精度が高い観測を行なうことができる。
過去のJAMSTECからのデータを参照すると、今回の実験で落としたランドマークは鯨骨やサツマハオリムシの
真上にありそうだ。
それと、ランドマークがかなり流されていたことも確認できた。今日わかったことを明日に繋げることで、
明日の成果が非常に期待できるものとなった。また、午後にはROVと呼ばれる有線型の海中ロボットを
急遽扱うことになった。自分が操縦するチャンスを与えられたのだが、ラジコンなどを扱ったのは小学生以来で
あったために一瞬戸惑いを受ける。
しかし、実際に扱ってみると、おもちゃのようで(価格は1500万円を超える)本当に面白かった。
直感型で誰にでも扱い可能なインターフェイスを用いることにより、こういったロボットも普及するのではないかと
考える。
今日の理系離れが進む日本において、子ども達にこういったロボットの扱いを少しでも体験させてあげられる
機会を設けることで今日の日本の理系離れが食い止められるのではないかと思う。
深度120mぐらいのところに、ミニチュア版エアーズロックのような地形がありそのうえ一面にサツマハオリムシが
群生していた景観を画面越しに目撃し度肝を抜かされた。


RTVの潜水準備

Tri-Dogの潜水準備

本日の食事

朝食
おかずのイカのうに和え風のものが非常に美味しかった。伊地知さんは非常に眠そうだった。
昼食
浦教授がこの昼飯を最後に、船をいったん下りる。鹿児島大学の小型船がお出向かいにくる。
教授を乗せた船はあたかもバカンスへの誘いのようでかなり羨ましかった。
夕食
今日のメインは焼き魚。魚が大好きな僕にとっては、幸せなひと時だった。
それにしても、料理の量多すぎます料理長・・・

僕はやっぱり海男にはなれなさそうです。


昼食のかつ定食

質素な朝食

本日のイベント

特になし

本日の編者の行動・感想

それなりに船上生活にもなれてきたものの、正直運動不足で体をもてあましている。明日あたりから早起きして、
甲板で筋トレでもしようかと企む。
船上の研究室では、違うチームの研究も見られるため非常に面白い。浦川先生が採取したユウレイボヤ
(写真参照)は実は我々の先祖にあたるかもというお話を聞き驚く。
残り4泊・・・

                            海底に潜むユウレイボヤ

8月18日


本日の天候

天候は快晴、海面は雲がうつるほど至って穏やかである。
いつまでこんな穏やかな日が続くのか分かりませんが、せっかく船に乗ったのだから少しぐらい船酔いも
味わってみたいと変なことを考えはじめました。
船員の方に聞くところ、船酔いはまず目の焦点が合わなくなるそうで、お酒の酔いみたいに気分は良くないそうです。

本日のTri-Dog

 午前の第3回ミッション。3時間のミッションを予定していたのだが、約45分で緊急浮上モードに切り替わる。
前方に絶壁などの、急激な変化があり回避できないことを検出したため、メインPCが自律的に緊急浮上モードの
命令を出したのである。こういった、緊急事態が起こった場合真上にしか浮上できないため、海上の交通量が
多い海域では調査は困難ということ。浮上してきた後、データを取り出し今回の原因を調べてみたところ強大な
サツマハオリムシの群生に正面衝突しそうで緊急浮上したようである。

 午後の第4回ミッション。今回も障害物を避けきれずに緊急浮上モードに入る。危険回避能力と大胆さの折り
合いが難しいようである。慎重派と大胆派が人間にいるのと同じでるように。どちらが長生きをするのかはわから
ないけれど、自分は大胆にスリリングな人生を送ってみたいと思う。

 ここからは前日紹介したROV(有線型海中ロボット)はSSBL(位置把握する機器)を、お尻に搭載している
ために後ろバランスになってしまい、操縦性がかなり悪かった。しかしながら、自分がROVを操っている途中に、
一面平面で砂漠のような海底に突如現れた岩を見つけて興奮。その周りには多数のたぎりや魚が存在していた。
 海底にはまだまだ、人間が踏み入れたことのない場所が多数存在するから、未知の生物やら海底領域に興味
ある方は是非海男になってください。
午後の実験の際には、バランスを調整し浮力を上げるために木片を後部につけることにした。
一見、ばかみたいな外見だが操縦性は明らかに向上した。今回の探索では鯨骨を発見した。
目標である、自分たちが沈めたランドマークは発見できず。


                            リモート操作で船に戻ってくるTri-Dog

本日の食事

昼食
今日はなぜかお腹が全く減っていないために昼食は抜きにすることに。
夕食
鱈の香草包焼きがメインの豪華な食事であった。

本日のイベント

花火大会
船上からの花火大会観賞。船長の粋な計らいで、鹿児島港花火大会が見られる場所まで舟を
移動してもらった。
女の子がいなくちゃ感傷深くなれないと思っていたが、美しいものは美しく、ビールを片手に夜風に
そそがれながら楽しんだ。船上からの眺めはなんとも言えず最高。船長ありがとう。


                           鹿児島湾花火大会の大車輪

本日の編者の行動・感想

段段とTDの整備にもなれてきたものの、まだまだ分からないことばっかりである。
巻先輩に色々教わりながらやっています。
今日の花火大会はNHKでも放送されたほど有名なものだったらしく、本当に美しく感動した。
こういった経験も海に関わられる人ならではのものですね。


8月19日


本日の天候

前日の快晴に続き今日も快晴。

本日のTri-Dog

 午前の第5回ミッション。今回の鹿児島湾実験で初めて3時間のミッションに成功した。
浮上はちょうどお昼のチャイムがなるころで、Tri-Dogもお腹が減っていたのだと思います。
 近藤准教授が「これで画像が撮れていなかったら失笑だよね」と浮上してくる前におっしゃって
いたのですがそれが見事的中してしまい、カメラの電源の残量が残っていなく、最初の20分ぐらい
しか撮れていませんでした。
電池残量をチェックしなかった初歩的なミスなのですが、こういった些細なミスや、ちょっとしたことが
致命的な大惨事を招きうるので、もう一度気を引き締めてやろうとメンバーで話し合った。
 午後の第6回ミッション。初めて何の問題もなく3時間のミッションを完了する。撮影された海底の写真
には何か引きずられた痕が多数存在する。未確認生物が尻尾を引きずっている痕か、はたまたRTVが荒らした
痕か想像だけが膨らみます。

                  船に接触しないように慎重につらされているTri-Dog

本日の食事

朝食
しめ鯖のおかずが非常においしかった。こんなにおいしいものよく作れると思います。
昼食
今回もそれほどお腹が減っていなかったので欠食することにしました。本当、自分以外の方の食欲には
驚かされます。メニューはかに玉だったそうです。
夕食
骨付きチキンをメインとした、初めての洋食だった。これまた美味。作業明け直ぐで暑くて食欲がさほどないので
明日はビールいっぱい飲みながら食してみようと思った。


                            夕食の豪華な骨付きチキン

本日のイベント

特になし。

本日の編者の行動・感想

前日、休憩がてら横になっていたらそのまま寝てしまっていた。
11時ぐらいに寝て5時には起床。朝から頭がクリアだったので院試のための勉強をする。
東京帰って、4日後に院試です。どうにかするしかないですね。朝日を見ようと思って、甲板に出てみたが
曇っていてそれほどきれいに見られなかったのには残念。
明日もがんばって起きてみようと思う。先日、運動不足を切に感じたから甲板で30分ぐらい筋トレを行なった。
船の上って、狭いようだけど色々とできます。



8月20日


本日の天候

鏡張りの海面。気温は若干高めの32℃

本日のTri-Dog

 第8回ミッション。船の側面に張っている縄にTri-Dogが引っかかる危険性があったので今回から降ろし方を変える。
今までは、船と平行に降ろしていたところを船首3時方向に向けて降ろすことにする。今回も3時間のフルミッションを
こなしてきて、撮影してきた写真には鯨骨やらハオリムシやら、カップラーメンの蓋のゴミとかさまざまなものが写っていた。
 第9回ミッション。今回設置したランドマークでの最後の潜航にすることに。写真も綺麗にとれていた。
なんら問題なくミッションをこなしているようで一行も一安心。
 夜のミーティングでは第8回ミッションで撮られてきた写真を、巻さんが一枚のモザイク写真に加工したものを見せて
もらった。モザイク写真にすると、断片的に撮られたものとは違い海底の泥の質感や起伏、生き物までが決して手が届く
はずのない場所での写真であるのだが生々しく鮮明に現れてくることに斬新さを感じた。

                           Tri−Dogが撮影してきた、サツマハオリムシ

本日の食事

昼飯の献立には「ソーメン」、「アイスクリーム」って書いていたのですけど、実際にはソーメンは出てこないわ、
アイスクリームはプリンになっているわと不意を突かれて笑ってしまいました。
夕食は僕の大好きなゴーヤチャンプルでした。思わずお替りまでしてしまい、
ついでに一杯やってしまい非常に満足な夕食だった。

本日のイベント

記念撮影会
今回淡青丸に同乗した研究メンバー合同でTri-Dogを囲み、桜島をバックに記念撮影を行なった。
うーん。爽やかという言葉は全く当てはまりませんね。
イルカと遭遇
近藤先生が、朝方甲板に出たところイルカが船と平行にジャンプをしていたりじゃれあっている姿を
目撃したそうです。 是非自分もこの船上生活期間中に拝んでみたいものである。

本日の編者の行動・感想

TDの整備にも段々と慣れてきたのに、既に明後日には下船するということに気づかされる。
慣れてきて、緊張感がなくなるとミスが増えてくると思うので手伝いはこれぐらいの期間が一番いいのでは
とは思うが。
初心いつまでも忘れるべからず。段取りもそつなくこなせはじめてきたので、自由な時間ができるようなったので
院試に向けて勉強をすると思いきや、自分の人生についてなど考えてしまう。
本当、東京にいたらこんな時間取れません。自分を見つめなおす良い機会になっています。


                               今回の実験クルー

8月21日


本日の天候

快晴。夕方頃から風速7mぐらいの風が吹きはじめる。一週間晴れつづけたな・・・
僕が晴れ男だろうなきっと。

本日のTri-Dog

 10回ミッション。1つのランドマークの位置を変えることにする。新しいウェイポイントでの試みでより広範囲に
おけるモザイク写真の合成を試みることに。
今までのウェイポイントと半分ぐらいは被っていたものの、何の問題もなくミッションを完了する。
順調すぎて特に書くことは有りません。
第11回ミッション。順調に3時間ミッションをこなす。これほどまで実験が順調に行なえることも今回がはじめてという。
プログラムに幾度の修正を加えた努力の賜物であるとおもう。
夜に調子が悪かったスコーピオンのストロボを変えることにした。

本日の食事

朝食、夕食ともにお魚メインの料理であった。夕食に出てきたハツの煮付けは非常においしかった。

本日のイベント

研究室のヒューズが飛ぶ
なにかの拍子に研究室のヒューズが飛んでしまった。TDの充電装置等もすべて止まってしまい、自分達が
研究室にいないときに起こったら明日の午前中の実験ができていなかったと考えるとぞっとする。

本日の編者の行動・感想

昨日はだいぶ疲れが蓄積していたため10時前に就寝した。寝室の変な機会音で夜中の2時ぐらいに目が覚めてしまい、
結局二度寝につけずに朝まで院試の勉強をしている。
前日、近藤先生が朝方に甲板でイルカを目撃したというのを聞き自分も出てみるが結局見ることはできませんでした。
いよいよ、長かった船上軟禁生活も明日で終わりです。本当、色々見つめなおす時間ができたなぁ。

編集後記

 まずは右も左も分からずにいきなり飛び込んできた自分を暖かくご指導してくださった、近藤准教授、坂巻技術職員、巻先輩そして同行させてもらった海洋研究所をはじめとする先生および先輩にお礼を言わせてもらいます。
本当ありがとうございました。
 そして、それほど役に立ちそうにない自分に今回同行させてもらえる機会を与えてくれた浦教授には感謝の念で一杯です。
 今回6泊7日の船上生活を経験させてもらって思ったことは、食事はうまい、研究やら勉強にすべてをすすぎ込めるまた、自分の人生について見つめなおす十分な時間ができるということです。自分の人生について見つめなおす時間なんて、東京の時間に追われている日々の中にいたらめったにできない経験あり、自分を確実に一回り大きくしてくれたと思います。何で航海士にロマンチストや、本を書き始める人が多いかなんとなく分かった気がします。
 Tri-Dogの扱いを通して学んだことは、実験においては同じ過ちを繰り返さないために一度やった失敗はマニュアル化して、二度と起こさないようにすること。責任者は、すべての責任を負うので他人に一度チェックさせた後でも最終確認は自分で行い必ず二重のチェックの目を入れることなど、モラトリアムを楽しんでいた自分には目新しい実社会での当たり前の慣習を学びました。
 ここで感じたこと、学んだことは必ず自分の糧となって成長させてくれるはずだと願っています。