湖水調査用の小型自律型潜水ロボットを開発


2000年3月13日



湖水調査用の小型自律型潜水ロボットを開発



東京大学生産技術研究所
 海中工学研究センター


 東京大学生産技術研究所海中工学研究センター(センター長:浦 環 教授)は、1995年より琵琶湖
研究所(所長:中村正久)と共同で、琵琶湖およびダム湖を調査する小型の自律型水中ロボット(注1)
研究開発してきました。このたび、完成にあわせて下記要領で記者発表を開催し、実用機の紹介ならびに
デモンストレーション潜航の公開をいたしますので、どうぞお越し下さい。

 このロボットは、湖水の環境観測を専用とする自律型実用機としては世界で初めて(注2)開発されました。

 ロボットは、主に、琵琶湖内の動植物の水中生態系の自動観測、遠隔操縦観測および近畿地方建設局管内の
ダム湖の全自動計測をおこなうことを目的として作られています。これにより、琵琶湖の環境観測のみならず、
京阪神地区の水源の水質や環境の迅速で的確な把握、定期的な状況把握が可能となり、水質の保全に大きく
貢献できるものと期待されます。

 ロボットは、長さ2m、重量180kgと軽く、可搬性に優れています。最大速力は2ノットです。ロボットに
は、有索潜水機の場合に必要な潜水機と母船とを結ぶケーブルがなく、リチウム電池を動力源として、湖水や
河川の中を自動的に航行します。ロボットにはテレビカメラが搭載されており、この画像を音響画像通信装置
を経由して母船に送ることができます。また、この画像を見ながら、操縦者がロボットを遠隔操縦することも
できます。テレビカメラ以外の観測装置としては、水中顕微鏡(注3)や水質計測器、 あるいは堆砂土砂計測
装置が搭載されていて、計測結果を音響データ通信装置を経由してリアルタイムで母船に送ることもできます。
水中顕微鏡は、温度躍層に生息するプランクトンの個体数を自動計測することができます。これにより、赤潮
などの原因が解明されると期待されます。さらに、ロボットは、浮力調整器を備えているので、プロペラを動
かさずに、水中の一定深さの所にじっとしていることができます。このため、魚などの生物を脅かすことなく、
観測することができます。

 ロボットは、自動観測のために次の3つの自動潜航モードを重点的(注4)にできるように設計されています
1)温度躍層の自動追従:温度躍層付近を上下して、そこでプランクトンなどの生態系を観測します。
2)湖底面でのルートトラッキング:湖底面に沿って決まったルートを一定高度で移動し、湖底の低酸素水塊の動態を観測します。
3)魚類等の観測:テレビ映像で魚類などを追尾し、生態を観測します。
この他にも、流木や立ち木などを回避するなどの高度な自律機能を備えています。

 ロボットは、湖底の砂や石でできたバラスト(重り)を抱いて潜航を開始します。目的の深さに来れば、その
バラストを捨てて観測活動に入ります。琵琶湖の環境に影響を与えないように、捨てるバラストについてもこの
ような細心の注意を払っています。観測が終わると浮上し、GPSで自分の位置を計測して、その結果を無線で母
船に伝えます。

 ロボットは、琵琶湖研究所の所有する「はっけん号」を使って展開することを第一義的に考えて設計されてい
ますが、RTK-GPSを備えていて、天ヶ瀬ダムのような山間地のダム湖においても精度の良い位置が得られるよ
うな装備をしています。堆砂土砂センサを利用して、ダム湖における土砂堆積が自動的に精度良く測れるシステ
ムにもなっています。すなわち、このロボットは、日本全国にあるダム湖の調査および保全に役立つ機能を持っ
ており、自律型潜水ロボットが、この方面で今後活躍することのさきがけになるものと期待されます。

 ロボットに関連する情報は、ウェブサイト(http://underwater.iis.u-tokyo.ac.jp/)をご覧ください。
写真および図面などが添付されています。

 本件は、東京大学広報室から東京大学記者クラブへ、東京大学生産技術研究所情報普及掛から各紙科
学部へ公表されています。ロボットの愛称については、一般公募されており、3月13日に滋賀県から
滋賀県庁記者クラブへ公表される予定です。また、本件はロボットの建造を担当した三井造船(株)から
造船記者会、機械振興記者クラブへ公表される予定です。また、建設省淀川ダム統合管理事務所から近畿
建設記者クラブと大手前記者クラブへも公表される予定です。

ロボットの公開のご案内
ロボットの公開のご案内
場所:杢兵衛造船所
日時:2000年3月15日(水)    
15時より式典    
15時半〜16時:公開運航    
16時〜:取材対応
連絡先:琵琶湖研究所 熊谷道夫総括研究員    
電話:077-526-4800

参考図:ロボットの展開概念図
    ロボットの写真

主要目
最大使用深度 110m
ロボット寸法 長さ2m×幅0.75m×高さ0.75m
ロボット重量 180kg
前進最高速力 2ノット
航続距離 20km
電 源 リチウム二次電池
主要装備センサー ビデオカメラ、水中顕微鏡、堆砂土砂計測装置、CTDO、pHセンサ
航法等装置 姿勢センサ、音響画像伝送装置、音響データ電送装置、ドップラーソナー、
D-GPS、水中位置検知装置、レンジングソナー、流木検知装置
情報処理装置 PEP-VM62(ARM710a)、画像処理LSI
OS VxWorks Tornado
支援装置 コンピュータ3台、充電装置


注1)
水中では電波が伝わらないので、無人潜水機には一般にケーブルが取り付けられ、これを経由して信号をやりとりして遠隔操縦する有索潜水機(ROV:Remotely Operated Vehicle)が広く使われています。しかし、そのケーブルの取り扱いが面倒なので、ケーブルのない無索無人潜水機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)の研究開発が進んでいます。東京大学生産技術研究所海中工学研究センターは、このAUV研究開発を主たるテーマにしており、1999年4月に設立されました。
注2)
これまで、海洋観測用の自律型海中ロボットを試験的に湖水観測に用いた例はありますが、専用の実用機の例はありません。
注3)
水中顕微鏡を搭載した自律型潜水ロボットは、世界で初めてのものです。
注4)
何でも出きるロボットを作ろうとすると、小型で使いやすいものはできません。そこで、ロボットの仕事の内容を絞ることが、良いロボット開発の最も重要なポイントです。
 


連絡先
東京大学生産技術研究所海中工学研究センター
 浦   環
電話:03−3402−6231
携帯電話:090-1409-1626
E-mail:ura@iis.u-tokyo.ac.jp