小型テストベッドAUV "Tam-Egg 1"


自律型水中ロボット

小型自律水中ロボットの必要性
 高い水圧に阻まれ、電波や光の届かない過酷な環境である水中は、ロボットが活躍する世界である。水中に存在する構造物を、映像を撮影することで詳細に調査することは、水中ロボットにとって大いに期待されている分野である。たとえば沈没船などの調査は、事故の原因究明や再発防止、あるいは環境保護の観点からも極めて重要である。調査する対象物が入り組んだ構造を持つ場合、小型でケーブルの拘束を受けない自律型水中ロボット(AUV)が有利に調査活動をおこなうことができる。このような観点から浦研究室では、小型テストベッドAUVとして、2003年1月にタムエッグ−1(Tam-Egg 1)を完成させた。


タムエッグ−1の設計

 設計には以下に示す条件を考慮した。
設計方針としては、複雑な構造物の中に入り込みながらでも調査活動をおこなえるように、小型かつ軽量であることを最重要課題とする。小型軽量化を考慮すると、搭載可能な機器や電源の容量に制限が生じる。このため、調査活動に必要となる必要最小限の機器のみを搭載する。このロボットは、水槽あるいは浅海域での実験用テストベッドとして設計し、耐圧性能を水深100mとする。ただし、実海域に対応できるロボットも、同程度の小型化を図る必要があるため、ロボットの耐圧性能のみを変更すれば、同形のまま3,000mの深海にも潜航可能な仕様として設計する。

タムエッグ−1の構成

 ロボットは円筒状の耐圧容器と浮力材からなり、各搭載機器がこれらに設置される。耐圧容器と浮力材は構造材としての役割を兼ねている。スラスタは、ロボットの運動自由度を制御するのに必要かつできる限り個数を減らすため、4基の100Wプロペラ式スラスタを、図に示すように配置する。水平方向に平行に設置されたスラスタにより、サージとヨーの運動制御をおこない、垂直方向にそれぞれ45°ずつ傾けてハの字状に設置されたスラスタにより、スウェイとヒーブの運動制御をおこなう。これにより4自由度を独立に制御可能である。ロールとピッチに関しては浮心−重心距離を長くとることで静的な安定性を確保する。複雑な環境下で、完全にロボット自身のみが行動決定をおこなうのは困難である。そこで、このロボットでは,水中画像観測を目的として、撮影した画像を音響通信により陸上はたは船上に送信する。この画像情報をもとに操縦者が超音波コマンドリンクにより行動命令を与えるという,半自律ミッションを想定し、このための音響通信装置を備える。音響通信では通信容量が小さく、障害物などによる通信途絶の危険性もある。このような場合、操縦者はできるだけ単純な指令のみを与え、簡単な判断や運動制御はロボットの自律機能に任せるシステムが有効である。そこでセンサとしても、ロボットの小型軽量化と操縦者の存在を考慮して、最小限のセンサのみを搭載する。環境を把握するセンサとしては、TVカメラと超音波測距センサを搭載する。TVカメラは、前方と斜め下方に向けて2台設置し、これらを切り替えながら使用する。これによりパンチルト機構を備えるよりも軽量で省電力化を図ることができる。照明装置もLEDを使用して省電力のものとする。運動を計測するセンサとしては、深度センサ、光ファイバジャイロ(FOG)、姿勢および磁気方位センサを搭載する。演算装置としては小型かつ省電力であるPC104規格のボード類を搭載する。水槽での実験を考慮して、イーサネットとNTSC映像信号のための通信ケーブルおよび外部電力のためのケーブルも接続することができる。  本ロボットの実験により得られる知見を基にして、将来は自律型の水中ロボットが自動的に水中構造物を観測する日が到来するであろう。
(執筆担当 近藤 逸人)

Last modified: Tue 01 Apr. 2003
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