自律型海中ロボット 「ツナサンド」

An Autonomous Underwater Vehicle “TUNA-SAND”

東京大学生産技術研究所 浦研究室

Here is an English version.


TUNA-SANDの設計

 浦研究室では、2007年3月、沈没船の探索, 熱水鉱床の開発, 大深度での対象物への接近観測とサンプリングを目的とした自律型水中ロボット(AUV: Autonomous Underwater Vehicle)「ツナサンド(TUNA-SAND)」を完成させた。実用機として1,500m耐深設計であり、「高精度な慣性航法装置」,「海底地形を参照した測位機能」,「潮流に対抗できる十分な推進力」,「ハンドリングとロバスト性を考慮したオープンフレーム構造」を備えていることが特徴である。これらの機能によって実海域という苛酷な環境であっても指定された位置に自動的に潜航することができる。
 一方で、通信・映像用の光ファイバーケーブルを装着することによって、自動操縦と遠隔操縦をハイブリッドで行うこともできる。すなわち、通常はロボットの自律機能によって自動航行させ、操縦者達はそのビデオ映像をリアルタイムにモニタリングし、必要があれば遠隔操縦に切り替えることができる。これによって、遠隔操縦のみで行う方式に比べて効率的な調査が可能となる。
 なお、本ロボットは、海洋工学研究所、浦研究室、海上技術安全研究所の共同研究によって開発され、(財)シップアンドオーシャン財団平成16-18年度技術開発基金補助研究「新形式海中モニタリングシステムの研究開発」の成果の一部である。また、(株)KDDI研究所より多大な協力を得て完成したものである。


水中における測位

 水中環境ではGPSをはじめとする電磁波を用いた測位が使用できないため、ポジショニングが大きな課題となる。本ロボットの特徴の一つである慣性航法装置は、自身の角速度計および加速度計の情報に、外部センサのGPS, ドップラ式対地速度計, 深度計の情報を融合することができるため、高い精度で位置推定を行うことができる。しかしながら、潜航開始後はGPSによる絶対位置情報が取得できず、一定高度に達するまでドップラ式対地速度計は使用できない。そのため、海底付近に潜航するまでに推定位置にドリフト量が蓄積する。大深度での対象物への接近観測やサンプリングを行うために十分な精度が確保できないため、その解決手法として海底地形を参照した測位手法(Terrain Navigation)を採用する。この手法は、航行中にローカルな海底地形をスキャンし、あらかじめ与えられた広域マップと照合することによって、マップ内での自機位置を推定する手法である。「ツナサンド」では、ペンシル状の音響ビームを発射して測距することができるプロファイリングソナーによって海底地形をスキャンする。この手法により、「ツナサンド」は外部からの支援を受けずに測位を行うことができる。

実海域での初潜航 (淡青丸KT-07-20次研究航海 鹿児島湾)

 進水から5ヶ月後の2007年8月、鹿児島湾の若尊カルデラ北西部(深度200m)において、「ツナサンド」をケーブルで船上のコンピュータとつないで展開し、熱水噴出孔の探索とそのビデオ撮影を目的とした調査潜航を行った。桜島の北東約5kmの海底に位置する若尊カルデラは、近年の調査で火山性の活動が確認され、2003年に気象庁によって「活火山」に指定されている。
 今回の調査では、船上にてビデオ映像を確認しながら2.5m間隔に設定した探索用航路ライン上を全自動で航行させ、特異点を見つけ次第、遠隔操縦モードに切り替えて周辺の観測を行った。そして、深度200mの海底で、南北100m、東西50mの範囲内に熱水の湧出地帯を4カ所発見した。また、同時にプロファイリングソナーによって観測領域の海底高度マップを取得した。
 発見した内の1ヵ所には金属性の沈殿物が煙突状に成長した高さ3mにもおよぶ熱水チムニーが形成されていた。「ツナサンド」の前方をチムニーに向け、距離を約1mに保ちながら一周させてビデオ撮影を行い、チムニーの外観だけでなく、熱水噴出の様子を詳細に観測した。
   発見した熱水チムニー    割れ目からの熱水湧出
(執筆担当 中谷 武志)


Last modified: Mon 22 Oct 2007
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